東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1186号 判決
先ず、控訴人は本訴は控訴人において課税処分に対する再調査請求の決定を経ることなく提起したから不適法である旨を主張するを以て案ずるに、被控訴人が控訴人の昭和二十四年度の所得につきなした課税処分に対し控訴人から昭和二十五年八月二十二日再調査の請求をなしたがその決定を経ないまま控訴人から昭和二十五年十月二十四日本訴を提起したことは当事者間に争がない(但右日時に本訴が提起されたことは記録上明である)。然るにこれより先被控訴人は昭和二十五年九月十一日控訴人において右所得税金の納付を怠つたものとして別紙目録記載の物件につき差押処分をなしたことは被控訴人においてもこれを認めるところ、原審における元氏家税務署長平野吉之助の供述によれば、右税務署においてはその頃再調査の請求がなされた場合その決定をなすに至るまでに相当長期間(調査困難な場合には二、三年)を要したことを認められるから、控訴人において右再調査請求につき決定がなされるまで訴の提起を延引するときはその間に滯納処分の手続は進行し控訴人は遂に差押物件に対する権利を失うに至る虞があることは容易にこれを予想しうるところである。このような場合は再調査請求の決定を経ないで訴を提起するにつき国税徴収法第三十一条ノ四第一項にいわゆる正当な事由がある場合に当るものと認めるのが相当であつて控訴人が右の決定を経ないで本訴を提起したのは違法ではない。従て被控訴人の右の主張は理由がない。